京楽が自分のベッドに抱えた体を横たえると、浮竹は長く熱いため息をついた。
髪が枕の上に広がって、白い視界に、上気した浮竹の顔がある。
潤み出た涙が零れ落ちないようにゆっくり瞬きをする。

京楽の大きな身体が浮竹に覆いかぶさって、シャツのボタンに手をかけられると浮竹も腕をあげて京楽の首をくつろがせようとした。
浮竹がもどかしそうに苦戦している間に、京楽が先に浮竹の肌を露わにして、触る。
目を細めて耐えてなお残りのボタンをはずそうとするが、京楽が胸に口づけたところで浮竹の腕が落ちた。
「ふっ…」
吐息に交じって浮竹の唇から声が漏れる。
京楽の唇がすかさずかぶさってくる。 浮竹は一度ごくんと唾液を嚥下すると、手でゆっくりと京楽の胸を押して身を起こした。
「浮竹?」
ベッドを下りて自然と向き合った京楽の前に腰を下ろし膝つきで、
「え、ちょっと浮竹」
京楽のベルトに手をかけて細い指で金具をつまんで外した。
「浮竹」
「させてくれ」
少し、愛おしそうに触れていたが、それからおそるおそるに口に含む。顔を僅かに傾けて、肩にかかる白髪の髪がたわむ。その薄くうつぶせられた瞼とまつ毛の曲線の美しさに京楽が見入っていると、しなやかな指をそろえて口元を覆うように支えにして浮竹が京楽を飲み込んだ。
浮竹は堪える様な吐息を頭上で聞いて、身体が痺れるのを感じる。
歯を立てないように奥まで深く唇で愛した。


「もういいよ」
「嫌か?」
「そうじゃなくて」
「出していいぞ……このまま」
「浮竹、無理しなくていいよ」
「していない」
「本当に?」
「……欲しい」
浮竹はきゅっと口腔に力を入れた。深く飲み込む。
低く呻く京楽が浮竹の頭に手をやった。その手に少し力が入る。
「…っつ」
京楽がぐっと抑えた切ない息遣いになって、どくっどくっと生命が波打つ。
浮竹は必死に受け止めようとするが慣れないのでやはりついて行けずに途中でむせった。
一度離して息をすると浮竹の背筋に寒気のように官能が駆け抜けた。
共鳴する。唇を汚しながら喘ぐ。
「あっ…あっ…」

再び京楽のものに口づけたまま浮竹は背中をしならせて目を瞑って堪える。
が、甘い声が漏れてしまう。
それでも最後まで口を使って舐めとった。
汚した唇や指なども下を使ってきれいにする。目を伏せていたが浮竹には京楽が自分をずっと見ていることが分かった。その視線に震える。
しばらく言葉は部屋になく、お互いの荒い息遣いだけが響いた。


「おいで」
と言って京楽が腕を引く。
熱を放たれずに苦しんで朦朧とする浮竹をベッドに上がらせた。
「ん……」
「ん、んん…」

始終浮竹に淡い声が漏れる。
浮竹をうつぶせにさせて背骨を舐める。
きつく吸う。
白い肌はすぐに紅く色づく。

すでに乱れて浮竹は京楽の名を何度も呼ぶ。
下に下がって行って触れると浮竹が震えた。
「んん……っ、きょうらく、だめだ、もう……」
「もう少し我慢」

浮竹を傷つけないよう付け根にトロッとしたものを流した。
肌が熱くなっていたので少し冷えた。足の間にたっぷり落とされて浮竹とシーツを濡らした。
すぐに京楽の手が伸びて来て湿った音をあげる。浮竹はたまらず声を上げた。
「ああっ」
「あああ……」

もうだめなんだ、きょうらくきょうらくきょうらく……

京楽は後ろから抱いて浮竹を促してやった。
あたたかい体温の侵入を感じてすぐに浮竹は達して前を汚した。
朦朧としながら自分の首の後ろに埋まる京楽の後頭部を愛しいと思った。
「まだだよ」



向き合うように抱かれていてそのまま浮竹は、
「なんでしゃべらないんだ」
と口数の少ない京楽に尋ねた。
「すごく、我慢してるから――」
と聞こえるのと同時にとても熱いものが自分に入ってきた。
「あああああ……」
「んんっ」
「あっ…!」
浮竹は目を瞑り、自分を貫いているものに翻弄されながら、自分に欲情している京楽の感情に煽られた。
「はっはっはっはっ……。う。く、苦しい……」
浮竹の呼吸が不自然に早くなる。悪い薬でバッドトリップしてしまったような感じだ。
「毎回これじゃあ浮竹が持たない……」
京楽が言って、動きを緩めた。
「だいじょう、ぶだ」
キスをして、抱き合って寝転んだ。
「京楽……」
「うん。だから、すごく我慢してる」
「ふっ」
浮竹が少し笑った。
それから目を瞑って、自分の身体の感覚を手繰った。

驚いたことにこの優しい穏やかな男の中に恐怖と焦燥を見つけた。一時期浮竹が自分を失った時の京楽の絶望。人の道を踏み外しかねない狂気と、鋭利で冷徹で理性的な抑制が、バランスを拮抗させて京楽を犯している。
愛しいと思った。
浮竹はこの男を、守りたいと思った。

あの日京楽がしてくれたように真空の中にきらめきを探す。
そして、京楽の熱い感情を彼に返した。

そうする事は、驚いたことに、少し寂しかったが、すぐに目の前の男からの熱い思いが目から伝わってきた。
自分の外側から入ってきたそれは、自分を包み込んだ。

「たぶん、もう大丈夫だ」
「そう?」
京楽はまた腰を少し強く抱いた。
こちらに向かせて顔を見る。
「つらくはない?」
「ああ」
密着した素肌が、お互いの体温を伝え、安心させた。

見つめたままぐっと深くすると、浮竹が首をのけ反らせて官能を逃そうとする。
しなやかに伸びた背は京楽の腕に支えられて痙攣を始める。
そらした肩から落ちた白髪が太腿の辺りに垂れながら揺らめく。
京楽は暴れる人魚のような浮竹の身体を抱き戻して口づけて体を密着させ、放埓を解き放った。

















2015



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